エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
空港内で博已さんはタクシーを手配してくれた。ローマ市内まではタクシー移動だそうだ。

「ローマまで一律50ユーロだよ。スーツケースがふたつだから追加料金が1ユーロ。バスやトラム、地下鉄もあるが、乗り方はおいおい覚えるといい」
「勉強はしてきたつもりですけど」

ひとりで移動できるかというと少し不安ではある。
タクシーの運転手には私が住所を伝えた。伝わるか心配だったので、もし伝わらなかったらメモを見せようと思っていた。しかし、運転手はすぐに理解してくれたようで、タクシーはなめらかに走り出す。

空港周辺は畑が続くが、少し行くともう市街地に入った。朝陽は見えない。朝もやと雲に遮られた街は、静かだった。人口も日本よりずっと少ない国だ。観光客が出歩かない時間はいっそう静かなのだろう。
やがて私の思い描いていた通りの街並みに、胸がとくとくと高鳴りだす。どこもかしこも堅牢なローマ建築の建物が続く。コンクリートの建築だとは聞いていたけれど、古代の話だと思っていた。現代のローマ市内には近代的な建築物がほとんどなく、ほぼすべてが歴史的な佇まいを見せていた。

イタリア人の運転手が「ここだよ」という意味の言葉を言い、路上でいきなり停車した。お世辞にも穏やかな停車じゃなかったところを見ると、通り過ぎそうになったようだ。
まったく悪気のなさそうな運転手に礼を言い、私たちがこれから住むマンションを見上げた。
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