エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
夜の弁当店は十七時から二十二時が営業時間だ。
店舗責任者の私は店の開店か閉店のどちらかは店舗にいることが多い。勤務時間が長すぎるので、通しで昼も夜も勤務する日は長めに休憩をもらったりする。もちろん、早番と遅番という勤務日もある。
今日は通しなので、午前と午後にそれぞれ、そしてこの間の時間に休憩がある。一度近くの自宅である社員寮に戻った。と、いっても食事を取ってひと息ついたらまた出勤なのだけれど。

「あの人、今日も格好良かったなあ」

私は昼時に会った彼のことを思い出す。午後の会議は眠くならずに済んだだろうか。あんなきりっとした人なのに、やっぱり可愛い。
官公庁にお勤めだとしたら、どこだろう。きっと頭のいい学校を出て入庁したに違いない。
そういったところではどんな仕事をするのだろう。私には想像もつかない。

「今が不満ってわけじゃないけど」

金銭的な事情で四年制の大学には行けなかった。短大も奨学金で通ったし、まだまだ返済をしなければならない。海外コミュニケーション学科で、英語をはじめとした多くの語学に触れたけれど、それが就職には繋がらなかった。
実家の近くで就職することも考えたけれど、あらたに学ぶ機会は東京にいたほうがあるに違いないと伯父の会社に厄介になった。
だけど結局今日まで、学びなおす機会も得られないままだ。日々の忙しさが現状維持でいいとささやく。いや、このままじゃいけない。
仕事や未来にはつながらなくても、私は外国語を学びたいし、その世界に触れたい。
夢は終わったわけじゃないと自分で思っている。それなら、そろそろ一歩踏み出してもいいかもしれない。

「お休みの日に、ボランティアとかしてみようかな」

浅草などの観光地には英語の案内ボランティアなどがある。もうじき新年度、動き出してみるにはちょうどいいタイミングかもしれない。
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