エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
「本日はお招きいただきありがとうございます。加賀谷の妻の菊乃と申します」
「日本からようこそ。故郷から離れ、心細いこともあるかもしれませんが、助け合っていきましょうね」
優しい言葉に安堵したのもつかの間、席に着く前に他の奥様から声がかかる。参事官の奥様のようだ。
「ずいぶんお若いのねぇ」
「あ、二十五歳になりました」
「お若いわぁ。学校を出てまだ何年も経ってないわねぇ」
すると他の奥様が声をかけてくる。
「学び舎はどちら? 誰か、先輩がいるかもしれませんよ」
学び舎……学校のことだろう。私はなるべくはきはきと答えようと笑顔を作る。
「私は山陰の生まれで、高校まではそちらに。小和田外国語短期大学に入学して上京しました」
しん、と部屋が静まり返った。奥様たちの間に妙な沈黙が流れる。気まずいというか、困ったというか、そんな空気なのだ。
別の奥様が「聞いたことのない学校ねえ」とつぶやき、他の奥様が「しっ」と言葉を止める。
どうやら私の学歴は、ここにいる奥様たちとは大きく違うようだ。
「学校なんてどうでもいいじゃありませんか。さ、お昼にしましょう。お席について」
大使夫人が場をとりなそうと口を挟んでくれるけれど、最初に尋ねてきた奥様が苦笑いで言う。
「ふふ、ほら、ここには桜葉(おうよう)女学院のOGが多いでしょう。だから、つい」
「あら、神戸杉陽(こうべさんよう)の派閥もいることをお忘れなく」
「どちらのグループか気になっちゃったのよねえ」
奥様たちは口々に言って、楽しそうに笑う。桜葉女学院も神戸杉陽も、聞いたことがある名門女子校だ。確か幼稚舎から大学まであって偏差値も高い。
おそらくここに集う奥様たちは、皆それなりの家柄の生まれなのだ。幼い頃から淑女として教育されてきた生粋のお嬢様。
私とは根本的に違う。
「日本からようこそ。故郷から離れ、心細いこともあるかもしれませんが、助け合っていきましょうね」
優しい言葉に安堵したのもつかの間、席に着く前に他の奥様から声がかかる。参事官の奥様のようだ。
「ずいぶんお若いのねぇ」
「あ、二十五歳になりました」
「お若いわぁ。学校を出てまだ何年も経ってないわねぇ」
すると他の奥様が声をかけてくる。
「学び舎はどちら? 誰か、先輩がいるかもしれませんよ」
学び舎……学校のことだろう。私はなるべくはきはきと答えようと笑顔を作る。
「私は山陰の生まれで、高校まではそちらに。小和田外国語短期大学に入学して上京しました」
しん、と部屋が静まり返った。奥様たちの間に妙な沈黙が流れる。気まずいというか、困ったというか、そんな空気なのだ。
別の奥様が「聞いたことのない学校ねえ」とつぶやき、他の奥様が「しっ」と言葉を止める。
どうやら私の学歴は、ここにいる奥様たちとは大きく違うようだ。
「学校なんてどうでもいいじゃありませんか。さ、お昼にしましょう。お席について」
大使夫人が場をとりなそうと口を挟んでくれるけれど、最初に尋ねてきた奥様が苦笑いで言う。
「ふふ、ほら、ここには桜葉(おうよう)女学院のOGが多いでしょう。だから、つい」
「あら、神戸杉陽(こうべさんよう)の派閥もいることをお忘れなく」
「どちらのグループか気になっちゃったのよねえ」
奥様たちは口々に言って、楽しそうに笑う。桜葉女学院も神戸杉陽も、聞いたことがある名門女子校だ。確か幼稚舎から大学まであって偏差値も高い。
おそらくここに集う奥様たちは、皆それなりの家柄の生まれなのだ。幼い頃から淑女として教育されてきた生粋のお嬢様。
私とは根本的に違う。