エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
末席に着き、気詰まりなランチ会は始まった。奥様たちは学生時代の話題に花を咲かせ、さらには服飾や芸術の話題で盛り上がる。私にはほとんどわからない会話だった。
もちろん途中何度も話を振られたが、彼女たちが興味を持つような返しは私にはなく、結局微妙な空気になるだけだった。
私の母校が偏差値的にさほど高いところでも有名なところでもないのは知っていた。だけど、私にとっては大切な学びの場だった。彼女たちには聞いたことのない学校でもだ。
きっと彼女たちにお弁当屋さんの勤務について話しても苦笑いをされるだけだろう。博已さんのためにも黙っていたほうがいい。
同じ人間なのに、見てきたものが違うとこんなにかみ合わないものなのか。
博已さんとかみ合うのは、きっと博已さんが私に合わせてくれているから。

(博已さんに会いたいな)

ランチ会の二時間ほど、私はそんなことばかり考えていた。



「ただいま」

夕方に博已さんが帰宅してきたのは声でわかった。私はソファでぼんやりしていて、窓の外はすっかりオレンジ色だった。イタリアの空の色ははっきりしていて、オレンジ色も濃い。

「今日はランチ会だったんだろう。お疲れ様」

ジャケットを脱ぎ、ハンガーにかけながら博已さんが声をかけてくる。
私はうつむいた。昼過ぎに帰宅してから、ずっとこのソファにいたので身体がこわばっている。それでも今日の不首尾は報告しなければならないだろう。

「うまく、できなかった気がします」

私の答えに、博已さんがこちらを向いた。私の様子がおかしいと思ったようで、歩み寄ってくるとソファの隣に座った。
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