エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
6.任務と事件
俺と菊乃がイタリアに渡ってひと月が経った。
大使館では表向きの業務である文化交流のため、日本にいる時分から準備していた和太鼓コンサートのイベントを進めていた。プロの和太鼓集団は国内外で人気があり、海外コンサートも何度か経験がある。今回は外務省バックアップによる初のイタリア公演。彼らもやる気充分だ。
また、イタリア政府側も非常に好意的だ。現在の首相が親日ということもあり、ローマ市内のホールを借りて公演が決まった。年代ものの建物が多いローマの中では数少ない近代建築のホールである。当日はホール前の広場で日本風の屋台が営業できるよう手配した。
そういった状況で、俺の表向きの仕事は非常に順調である。
裏の仕事……というと少し語弊があるが、所謂情報収集の仕事はこのコンサート関連で出会う人々と信頼関係を築くことからスタートである。打ち合わせや会食を通じて担当者や関連の議員たちと仲良くなる。そして、現在の国内の情報を取るのだ。
新聞やネットなら日本でも見られるが、現地の人間と話さないと出てこない情報は多くある。そして今回の業務でターゲットとなる複数の人物のうち、ひとりと接触が適いそうであるとわかった。
ジャコモ・ヴァローリという議員で、こういったイベントごとには顔を出すことが多いそうだ。首相とは同じ党に所属しているが現政権には批判的。次回の選挙では党内に別の候補者を擁立する可能性がある。
日本としては親日の現政権の継続は都合がいいが、ヴァローリが擁立する候補者はヴァローリ同様排外主義で歓迎できない。このあたりの情報がほしいのである。