敵国へ嫁がされた身代わり王女は運命の赤い糸を紡ぐ〜皇子様の嫁探しをさせられているけどそれ以外は用済みのようです〜
『運命の相手は、ジョージ・サッチャー子爵です』
その名前を口にした途端、王妃も妹も激昂した。
『サッチャー子爵ですって!? あんな脂がのったつるっぱげデブの中年男が私の運命の相手だなんてあり得ない!!』
『おまえ、わたくしが嫌いだからって妹に嫌がらせをしているの? 嘘を吐いているならただじゃおかないわよ!!』
『う、嘘なんて吐いてません。本当のことを伝えただけで……』
しかしどんなに真実だと主張してもそれを証明する方法はない。結局オーレリアは王妃から酷い折檻を受ける羽目になった。
そして王妃の妹はサッチャー子爵ではなく美丈夫で有名なホルマン伯爵家の次男と結ばれた。王妃からは「おまえの神の恵みなんてちっとも当てにならない。役立たずの力ね!!」と散々罵られた。毎日罵声を浴びせられていると、コーレリアやお城で仕える者たちからも白い目で見られ、蔑まれるようになった。
王妃が発する言葉は呪いのようにオーレリアの心を蝕んでいき、オーレリア自身も自分の力は何の役にも立たないと思うようになった。