敵国へ嫁がされた身代わり王女は運命の赤い糸を紡ぐ〜皇子様の嫁探しをさせられているけどそれ以外は用済みのようです〜


 まずはじめに、運命の赤い糸は誰もが皆平等に持っているわけではない。
 小指に赤い糸がついていない場合もあって、それは二通り存在する。


 一つは単純に運命の相手がいない場合だ。これは今世で巡り会うことができないことを指し、結婚はできたとしても破綻する確率が高く、基本的に生涯独身を貫く人がほとんど。

 そしてもう一つは――。
「……運命の相手や本人が成人していない場合は小指の赤い糸が見えません」

 ルパ王国もハルディオ帝国も男女の成人は十八歳。その歳にならないと運命の相手を見ることはできない。


 オーレリアが次に運命の相手を確認しなくてはいけないのは、最年少のパーシヴァル・ハルディオ第三皇子。

 来月誕生日を迎えて十八歳にはなるが、今はまだ成人していない。よってオーレリアがパーシヴァルに会って運命の相手を確認したところで小指に赤い糸は存在しないのだ。

 そしてパーシヴァルが成人したとしても相手が年下という可能性だってある。
 もしかしなくとも、これは長期戦になるかもしれない。


 そのことを説明するとトラヴィスは神妙な表情で頷いてくれた。

「なるほどそういうことなんだね。パーシヴァルは帝都の学園で寮生活を送っていて、今は宮殿にいないから。誕生日を迎えた次の休みに帰ってくるよう言っておくよ。その時に運命の相手の確認してもらえるとありがたい」
「分かりました」

 オーレリアは肯うとトラヴィスを見つめる。

 物語から出てきた皇子様のようなきらきらしい雰囲気を纏う彼に熱い視線を送る令嬢は少なくない。一体、トラヴィスの運命の相手は誰だろう。

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