敵国へ嫁がされた身代わり王女は運命の赤い糸を紡ぐ〜皇子様の嫁探しをさせられているけどそれ以外は用済みのようです〜
「イメルダ、待って。幻滅なんてしてない。俺が幻滅したのはイメルダじゃなくて俺自身なんだ!」
「そんなの嘘」
信じられないといった様子でイメルダは頭を横に振る。
パーシヴァルはイメルダの腕を掴む手に力を込めた。
「嘘じゃない。あの時は俺がイメルダを守らなくちゃいけなかったのに、逆に守られた。男としてこんなに情けないことってないよ。それなのに、イメルダはあの日を境に剣を習い始めて」
「それは私が殿下を守れるよう強くなりたかったから」
「俺だってイメルダを守りたいよ。だから剣の練習だって頑張った。けど、才能が開花したイメルダとの差は開いていく一方で。悔しくて情けなくて、イメルダに会っても素直になれなくなってしまったんだ」
パーシヴァルはイメルダの腕から手を離すと回り込むようにして彼女の前に立つ。そして朱色の瞳に強い光を宿し、真っ直ぐ眼差しを向ける。
「イメルダをゴリラ女だなんて思ったことは一度もない。俺にとって、君はとてもかっこいい素敵な女の子だ」
「殿下……」
するとどこからともなく美しい鳥の声が森に響く。羽ばたく音が聞こえて二人が身体を向けてみると、木の上で彩鳥が羽を休めていた。
それを目の当たりにしたイメルダが途端に喜色の声を上げる。
「殿下、見て! 幸せを呼ぶ彩鳥よ!」
「ほ、本当だ」
パーシヴァルの方も彩鳥を見て喜びから破顔する。
二人は互いに笑顔を向けるも、すぐに気まずげに視線を泳がせる。暫くしてからパーシヴァルが視線をイメルダに戻し、口を開いた。