敵国へ嫁がされた身代わり王女は運命の赤い糸を紡ぐ〜皇子様の嫁探しをさせられているけどそれ以外は用済みのようです〜
もしそうならいらない王女を寄越したと皇帝の逆鱗に触れて、今度こそ王国は滅亡に追い込まれるかもしれない。
たちまちオーレリアの心臓の鼓動が速くなり、胸の上に手を置く。
(やっぱり何の役にも立たない私なんかじゃなくて、高貴で美しいコーレリア様が来るべきだったんだわ……)
今更ながら自分の力不足を嘆き、ここに来たことを後悔した。
オーレリアはコーレリアの三つ下の妹だが『義理の』という文字が前につく。オーレリアの母は平民出身でただのメイドだった。
オーレリアは母親譲りの濃紺がかった黒髪をしていて、瞳の色はルパ王と同じ水色をしているものの灰色掛かっている。
地味で目立たない容姿なので通常なら家族から疎まれるだけで済んだだろう。しかし現状はそれだけに留まらず、王妃やコーレリアから虐めを受ける日々を過ごしていた。
その原因はオーレリアが持つ神の恵みのせいだ。この力のせいで王妃とコーレリアから嘘つきの役立たず呼ばわりされて酷い扱いをされるようになった。
ルパ王も二人に同調して助けてはくれず、周りの家臣や使用人たちからも「王家の恥」や「紛いもの」と蔑まれ、最終的に無視された。
こうして物心ついた頃から虐げられてきたオーレリアは帝国へ嫁ぐことが決まるや否や、それまで放置されてきた王女教育を徹底的に叩き込まれた。
短期間での詰め込みは大変で、当然ながらすべてを身につけることはできなかった。