敵国へ嫁がされた身代わり王女は運命の赤い糸を紡ぐ〜皇子様の嫁探しをさせられているけどそれ以外は用済みのようです〜
オーレリアは皇帝が落ち着くのを見計らって、小さく手を挙げると躊躇いがちに尋ねた。
「では……私はこれからどうすればいいでしょうか?」
側妃として嫁ぎに来たオーレリアにはもう帰る場所がない。そして三人の皇子の嫁探しも終わって用済みになってしまった。これまでのように宮殿では暮らしていけない。
一人で生計を立てていけるか不安もあるし、それよりまずは帝国で暮らしていくために永住権はもらえるだろうか。
様々な思考が頭を駆け巡って不安を覚えていると、突然トラヴィスに腕を掴まれた。
「陛下、行き違いもあったので隣の部屋でオーレリアと二人きりで話をしてきてもよろしいですか?」
「ん? ああ、そうだな。二人で話してくるといい」
皇帝がその願いを聞き入れると、トラヴィスはオーレリアを連れて一旦場所を移動する。
隣の部屋に移されて扉が閉まった途端、オーレリアはトラヴィスに両肩を掴まれてそのまま引き寄せられる。
突然の抱擁にオーレリアの胸は嫌でもときめいてしまった。心臓の鼓動は速くなり、身体の中を激しい熱が駆け巡る。しかし、すぐにその熱はサーッと引いていった。
(トラヴィス様はビクトリア様と運命の赤い糸で繋がっている。私が介入して二人の運命を滅茶苦茶にするわけにはいかないわ)
部屋に誰かが入ってくることはないだろうが、もしこの状況を見られたら勘違いされてしまう。一刻も早く離れなければとオーレリアはもがいた。
しかし、もがけばもがくほどトラヴィスの腕はさらに強くなっていく。
オーレリアは叫んだ。