敵国へ嫁がされた身代わり王女は運命の赤い糸を紡ぐ〜皇子様の嫁探しをさせられているけどそれ以外は用済みのようです〜
「帝国の太陽にご挨拶申し上げます。ルパ王国より参りましたオーレリアでございます」
謁見の間ではなく執務室に通されたオーレリアは挨拶をする。
最初の挨拶だけは粗相のないようにと教師から口を酸っぱくして言われていたので慎重に行った。スカートの裾を摘み、顔を伏せて淀みなく挨拶を終えることができたオーレリアはほっと胸をなで下ろす。
(大陸の半分以上を統治する皇帝陛下はどんな方なのかしら?)
部屋に通された際、オーレリアは緊張してしまって皇帝を直視することができなかったし、彼もこちらに背を向けていた。今だって畏れ多くてその容姿を確認することは憚られる。
『ハルディオ帝国の皇帝は六十を過ぎた狒々爺よ。せいぜいその枯れ枝のような痩せっぽちの身体が気に入られるよう祈ってあげる!』
頭にコーレリアの意地悪な声が響く。
キュッと唇を引き結んでいたら、声を掛けられた。
「――……いつまでそうしているんだ。顔を上げなさい」
発せられた声は想像に反してうら若い男性のものだった。
オーレリアはハッとしてゆっくりと顔を上げる。
すると、目の前には白い服に金色の刺繍が入った華美な服装の青年が立っていた。癖のない真っ直ぐな黄金色の髪に太陽のような赤い瞳を持つ青年は彫りが深く整っていて、非の打ち所がない美しい容姿をしていた。