敵国へ嫁がされた身代わり王女は運命の赤い糸を紡ぐ〜皇子様の嫁探しをさせられているけどそれ以外は用済みのようです〜
「はじめましてトラヴィス様。皇帝陛下との謁見だと思っていました。どうかご無礼をお許しください」
「気にしないから謝らないで。長旅で疲れているだろうからまずは父との謁見よりも年の近い私との方が気兼ねなく話せると思って、この場を設けたんだ」
トラヴィスは窓辺に設けた席へオーレリアを案内する。テーブルにはお茶とお菓子が用意されていて、一人掛けのソファは寛げるようにふかふかのクッションが背もたれに置かれていた。
オーレリアは驚いた。まさか気遣ってくれる人が帝国にいるなんて思いもしなかったからだ。ルパ王国のお城では誰一人として気遣ってくれる人はいなかったし、寧ろオーレリアが近くを通っても無視されるだけだった。
目を見開いて呆然と佇んでいたら、トラヴィスが苦笑しながら頬を掻く。
「まあ半分は建前だから。本当のことを伝えると陛下は現在、床に伏せっていて面会謝絶中なんだ。今は私が皇帝代理をしている」
「陛下はご病気なのですか?」
「うん。数年前に患った病気が一ヶ月前に再発してしまってね。今は薬の副作用で一日のほとんどを眠って過ごしている。いつ容態が急変してもおかしくないから、家族以外会うことは医師から禁じられているんだ」
「そう、ですか」
話を聞いたオーレリアは落胆した。