きっともう君には会えない
暑い暑い夏の初め。


セミの音が太鼓のように響くから

授業の音が聞こえない。そのくらいの田舎。





「……っち!!おーいあまのっち!!」


「んーー?」





気づけば私は眠っていたようだ。

目の前には私の友達の 夏川 葉津乃 が下敷きを



パタパタ仰がせながら、こちらに手を振っていた。






「もうっ!!
天野ってば授業中はいっつも寝てばっか!!」



「いーでしょ。今日こんなに暑いんだから。」



「……私なら逆に目覚めるんだけど。」






私は起きたばかりのふわふわした頭を頑張って

フル回転させ、次の授業の準備をする。



すると、急に頭の上から別の声が降ってきた。






「ぷっ……あははっ…お前どんな髪してんのっ…」






そう言いながら私の寝癖を手で治してくれる。


そんな一つ一つの仕草にも

私は馬鹿みたいに意識してしまう



こいつは秦野 光輝。

名前の通り、存在自体輝いているような、そんな奴だ。





「…わ、笑うな!!」



「ごめんごめん、ついイジりたくなった。
ムキになってる天野が可愛いからかなぁ~」




光輝はそう言って、私の頭をわしゃわしゃと撫でた。


……絶対子供扱いされてる。





光輝は、私が幼稚園からの幼なじみ

ずっと昔から一緒で中学になっても変わらない。



そんな軽いやり取りが私は大好きだった





しかし、同時に曇る気持ちもあるのには

気づかないフリをした。
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