― 伝わりますか ―

◇再会 [二]

「危ないっ!」

 悠仁采の目の前に振り下ろされた(やいば)から、鋭い閃光が生まれた。受け止めた伊織の刀は寸前で『敵』の力を吸収し、押し返して真一文字に斬る。残るはあと二人。他は悠仁采の幻術で腹を裂かれ、身を焼かれ、見るも無残な屍骸と化していた。

「朱里殿……助太刀致す」

 伊織も覚悟を決めたようであった。悠仁采は言葉なく頷き、伊織の腰に下がった脇差を鞘から抜き去るや、内一人を斬り殺した。が、伊織の眼前で逃げ場を失った最後の一人は平伏(ひれふ)し、

「敏信様っ、どうか、どうか我が身をお助けくだされ! このことは誰にも申しませぬ……ですからっ」

 と命を乞うた。刀を構えた姿勢の伊織は、そのまま動かない──いや、動けないのだ。この者に何の罪もない。これは飽くまでも自分の家を守るための所業。良心の呵責(かしゃく)が己を封じ込め、身動きが取れなくなる。


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