― 伝わりますか ―
「必ず……必ずであるぞ」

 溜息とも息切れともつかない空気を吐いて、刀を下ろした伊織は念を押した。相手はここぞとばかりに何度となく頭を上下に振り、土下座の体勢のまま後ずさっていく。

「去れ」

 伊織は背を向け、言い放った。膝をついた悠仁采へ向け歩み出す。しかし頭上に微かな気配を感じておもむろに振り返ると、鬼気迫る形相の男が刀を振り上げ、襲い掛からんとしていた。

「……ぐっ」

 断末魔の呻きを上げたのは、伊織ではなく、その男の方であった。

「朱里殿……」

 伊織から拝借した短刀を悠仁采が投げつけ、息の根を止めたのだ。

「全ては生きるか死ぬか……情けは無用」

 その言葉に(いささ)か困ったような表情をした伊織は、肩で息をする悠仁采に手を貸し、再び神妙な顔つきでこう問うた。

「さて……じじ殿の妙案とは、如何(いか)なるものでございましょうや」



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