― 伝わりますか ―
【壱】月見草の恋歌

[一]

◆以降は2014年に(他サイトにて)連載していた際の前書きです。

 こちらの物語は【序】の数年後、影狼(かげろう)が報妙宗の拠点『魔妖城』を壊滅に及ぼし、その劫火の中で滅びようとする八雲(やくも) 悠仁采(ゆうじんさい)の若かりし頃のお話です。

 現在では差別用語とされる言葉も(今回の掲載に当たり、1ヶ所のみに減らしました(2023年6月11日))登場致しますが、時代が遠い昔という事で、恐縮ながらそのまま使わせていただきます。(こちらも【序】と同様、高校時代の作品ですので、少々大目に見てください(汗))








 あれはいつのことであっただろうか──。



 炎に包まれ、崩れ落ちる魔妖城の中、彼は一人夢を見始めた。

 これから延々と続く死という夢を追い、明らかに訪れる袋小路を目前にして。

 それでも。

 彼は今、微笑(わら)うことが出来るのだ。

 ひとときの夢を……幸せな時を思い出しながら──。



 悪に走る者、(ゆえ)なくしてならず、

 悠仁采、これの(たぐい)なり──。



 ◆ ◆ ◆


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