― 伝わりますか ―
[四]
外は既に夜の帳が降り始めている。
織田軍が彼の屋敷を取り囲むのに要した時間は、あれから半刻。その間に悠仁采は緊急軍議を開き、以前より立てていた作戦を遂行することとなった。
あの時、橘 左近のままでいたならば、どれほどの戦略家になれたものか。
織田軍などは目でもないだろう。それほどの力だ。
悠仁采が真の力を出せば、織田にも勝てるやも知れない。が、今居る兵の数は数十。月葉が堺に辿り着くまで持つかどうかの戦力である。
八雲軍の戦術は幾らもなかった。
元々が館ゆえ、城のように高い塀もなく、弓隊を配置するのは危うい。又、山中で急な傾斜が多いことから、馬上の戦いも避けなければいけない。
しかし逆を申せば、山道であることを利用して、落とし穴など罠といえる罠は全てに仕掛けてある。が、それも大した妨害にはなるまい。
「悠仁采様っ! 織田軍、まもなく到着とのことです!」
月葉を堺に向かわせる従者とは替わって、以前の諜者が軍議の間に飛び込んできた。月葉は既に館を出ている。隠れている彼女を見つけ出すのにかなり手間取ったが、籠に入れてしまえばこちらのものであった。戦が始まる頃には半里ほど離れているだろう。
織田軍が彼の屋敷を取り囲むのに要した時間は、あれから半刻。その間に悠仁采は緊急軍議を開き、以前より立てていた作戦を遂行することとなった。
あの時、橘 左近のままでいたならば、どれほどの戦略家になれたものか。
織田軍などは目でもないだろう。それほどの力だ。
悠仁采が真の力を出せば、織田にも勝てるやも知れない。が、今居る兵の数は数十。月葉が堺に辿り着くまで持つかどうかの戦力である。
八雲軍の戦術は幾らもなかった。
元々が館ゆえ、城のように高い塀もなく、弓隊を配置するのは危うい。又、山中で急な傾斜が多いことから、馬上の戦いも避けなければいけない。
しかし逆を申せば、山道であることを利用して、落とし穴など罠といえる罠は全てに仕掛けてある。が、それも大した妨害にはなるまい。
「悠仁采様っ! 織田軍、まもなく到着とのことです!」
月葉を堺に向かわせる従者とは替わって、以前の諜者が軍議の間に飛び込んできた。月葉は既に館を出ている。隠れている彼女を見つけ出すのにかなり手間取ったが、籠に入れてしまえばこちらのものであった。戦が始まる頃には半里ほど離れているだろう。