― 伝わりますか ―
月葉が残していった書状は、織田信秀に宛てられた嘆願であった。
彼女も水沢との戦、織田家が勝つと悟っていたのだろう。自分は悠仁采に助けられたが名を偽り、この館で女中として働いて身を隠していたと、自分を知らぬこの館には何の非もないのだと、八雲にお咎めが及ばぬよう、粛々と弁明が述べられていた。
が、せめて父親が和睦に落ち着くまでは──過去の悲劇をひとときでも忘れ、悠仁采との時を大事に過ごしたかったのかも知れない。
「悠仁采様、そろそろお支度を替えませぬと……」
未来の瞳炎の父である小姓がおずおずと言った。悠仁采はだるそうに腰を上げ、無言で部屋を退く。
脳裏に浮かぶのは最後に映った月葉の表情。彼女は声でない声で彼の心に叫んでいた。“悠仁采様を私の犠牲になどしたくはないのです!”と。
そしてもう一つ映る情景。
それをただ見つめることしか出来なかった彼。
見つめることしか、出来なかった彼……──。
彼女も水沢との戦、織田家が勝つと悟っていたのだろう。自分は悠仁采に助けられたが名を偽り、この館で女中として働いて身を隠していたと、自分を知らぬこの館には何の非もないのだと、八雲にお咎めが及ばぬよう、粛々と弁明が述べられていた。
が、せめて父親が和睦に落ち着くまでは──過去の悲劇をひとときでも忘れ、悠仁采との時を大事に過ごしたかったのかも知れない。
「悠仁采様、そろそろお支度を替えませぬと……」
未来の瞳炎の父である小姓がおずおずと言った。悠仁采はだるそうに腰を上げ、無言で部屋を退く。
脳裏に浮かぶのは最後に映った月葉の表情。彼女は声でない声で彼の心に叫んでいた。“悠仁采様を私の犠牲になどしたくはないのです!”と。
そしてもう一つ映る情景。
それをただ見つめることしか出来なかった彼。
見つめることしか、出来なかった彼……──。