― 伝わりますか ―
「……!」
月葉は声にならない唇で何かを必死に叫んでいる。表情は今までで最も美しい笑みを湛えていた。悠仁采が生きていたこと──それが彼女の感情を先走らせていた。
既に両軍合わせておよそ二百。月見草のこの地を戦場として、戦乱の真っ只中にあった。
この時未だ火縄銃、もしくは種子島と呼ばれる鉄砲は伝来していないため、流れ弾なる物は飛んでこないが、それでも手元から離れた槍や、織田軍の弓隊による矢などが宙を舞っている。
その中を突き進む二人は、そんなことにはまるで気付かぬように走り続けていた。
目頭が熱い。涙で曇った瞳で月葉の元を目指す悠仁采の心には、喜びと哀しみが入り混じり──否、そんなことよりどうして戻ってきてしまったのか──それを問い質さねばと先を急いていた。
月葉まであと少し……もう少し……しかして真正面に映る彼女の背後に、漆黒の闇から現れた一筋の光線が迫る。それは周りに倒れ朽ちた兵士達の断末魔や、叫びを吸い尽くす死神の如く、あたかも月葉を呑み込もうとしていた。
月葉は声にならない唇で何かを必死に叫んでいる。表情は今までで最も美しい笑みを湛えていた。悠仁采が生きていたこと──それが彼女の感情を先走らせていた。
既に両軍合わせておよそ二百。月見草のこの地を戦場として、戦乱の真っ只中にあった。
この時未だ火縄銃、もしくは種子島と呼ばれる鉄砲は伝来していないため、流れ弾なる物は飛んでこないが、それでも手元から離れた槍や、織田軍の弓隊による矢などが宙を舞っている。
その中を突き進む二人は、そんなことにはまるで気付かぬように走り続けていた。
目頭が熱い。涙で曇った瞳で月葉の元を目指す悠仁采の心には、喜びと哀しみが入り混じり──否、そんなことよりどうして戻ってきてしまったのか──それを問い質さねばと先を急いていた。
月葉まであと少し……もう少し……しかして真正面に映る彼女の背後に、漆黒の闇から現れた一筋の光線が迫る。それは周りに倒れ朽ちた兵士達の断末魔や、叫びを吸い尽くす死神の如く、あたかも月葉を呑み込もうとしていた。