― 伝わりますか ―
「……では……じじ殿。これを召し上がれ。まずは腹ごしらえです」
唖然とした悠仁采は言われるがままに手を差し出し、囲炉裏で程好く温められた小柄な椀を受け取っていた。昨夜の鍋を仕立て直した粥であった。
ややあって手製の木匙ですくい口に運ぶ。唇に触れた汁は舌の上を通り、喉を熱くすると共に、凍てついた悠仁采の心まで溶かしていくようだった。
「伊織殿……と申されたな。もしや姓は“織田”であろうか?」
ようやっと食欲を取り戻せたのであろう。椀を半分ほど進め、一息ついた彼は伊織に問うた。しかし問われた若武者は眉をしかめ、
「何故に“織田”と……?」
と問い返した。どうやら的は外れたらしい。訝しげなその表情は違うものを語っている。
「……いや……昨夜、右京殿が「織田に助けられた」と溢した故……わしと同様、そなた達に救われたと思うただけだが……」
すると鍋に戻しておいた粥をよそる底の深いヘラに手を伸ばし、ほんのり口角を上げた伊織は、
唖然とした悠仁采は言われるがままに手を差し出し、囲炉裏で程好く温められた小柄な椀を受け取っていた。昨夜の鍋を仕立て直した粥であった。
ややあって手製の木匙ですくい口に運ぶ。唇に触れた汁は舌の上を通り、喉を熱くすると共に、凍てついた悠仁采の心まで溶かしていくようだった。
「伊織殿……と申されたな。もしや姓は“織田”であろうか?」
ようやっと食欲を取り戻せたのであろう。椀を半分ほど進め、一息ついた彼は伊織に問うた。しかし問われた若武者は眉をしかめ、
「何故に“織田”と……?」
と問い返した。どうやら的は外れたらしい。訝しげなその表情は違うものを語っている。
「……いや……昨夜、右京殿が「織田に助けられた」と溢した故……わしと同様、そなた達に救われたと思うただけだが……」
すると鍋に戻しておいた粥をよそる底の深いヘラに手を伸ばし、ほんのり口角を上げた伊織は、