― 伝わりますか ―
◇背(せな)[三]
「おじじ様っ、おじじ様! おとぎりを摘んで参りました。外はとても良い天気です。少し表へ出てみませぬか?」
そんな複雑な空気を澄み渡らせたのは、元気良く馳せ戻った秋の止め処ない呼び掛けであった。
「これっ……秋。じじ殿が休まれていたら起こしてしまうところだったぞ」
今度は諭す側に回った伊織に、
「お二人のお声が聞こえましたので……さぁ兄様、手伝ってください。おじじ様を小川のほとりへお連れするのです」
悪びれる様子もなく土間から駆け上がった秋は、しかし先程までの勢いは刹那に落ち着かせ、悠仁采の横に鎮座するや優しげな面持ちでこう言った。
「おじじ様、お天道様に傷を癒して戴きましょう」
──と。呆気に取られた悠仁采は、又もや差し出された手に手を委ねていたが、これも又良しと心の内で苦笑しながら、暫しこの兄妹に身を任せる気持ちになっていた。
そんな複雑な空気を澄み渡らせたのは、元気良く馳せ戻った秋の止め処ない呼び掛けであった。
「これっ……秋。じじ殿が休まれていたら起こしてしまうところだったぞ」
今度は諭す側に回った伊織に、
「お二人のお声が聞こえましたので……さぁ兄様、手伝ってください。おじじ様を小川のほとりへお連れするのです」
悪びれる様子もなく土間から駆け上がった秋は、しかし先程までの勢いは刹那に落ち着かせ、悠仁采の横に鎮座するや優しげな面持ちでこう言った。
「おじじ様、お天道様に傷を癒して戴きましょう」
──と。呆気に取られた悠仁采は、又もや差し出された手に手を委ねていたが、これも又良しと心の内で苦笑しながら、暫しこの兄妹に身を任せる気持ちになっていた。