― 伝わりますか ―
◇密事 [二]
「おじじ様──おじじ様! 秋が参りましたっ」
涼やかなその朝も、秋の元気な呼び声と共に始まり、勢い良く開かれた戸口から漂う森の新鮮な空気が辺りを満たしていた。
あれから五日目──。
弟切のお陰か寝たきりではなくなったが、依然右京の小屋とその周辺で一日を過ごす悠仁采は、囲炉裏の端で右京の草鞋を直していた。
「おはようございます、秋殿。今朝はお独りか?」
悠仁采の器用な手先を、好奇心の瞳で覗き込んだ秋に、丁寧な挨拶をしながらも手は黙々と動いている。
「兄様はお城で何やらお話があるのだそうです。ですから独りで来てしまいました。右京様も、もうお出掛けになったのですね……」
と、少々詰まらなそうな表情をしてみる。女御一人では危険な森──と、一つ説教をしたいところではあったが、わざわざそうまでして来てくれた秋を想えば、その言葉を喉元へ押しやらずにはおられなかった。
涼やかなその朝も、秋の元気な呼び声と共に始まり、勢い良く開かれた戸口から漂う森の新鮮な空気が辺りを満たしていた。
あれから五日目──。
弟切のお陰か寝たきりではなくなったが、依然右京の小屋とその周辺で一日を過ごす悠仁采は、囲炉裏の端で右京の草鞋を直していた。
「おはようございます、秋殿。今朝はお独りか?」
悠仁采の器用な手先を、好奇心の瞳で覗き込んだ秋に、丁寧な挨拶をしながらも手は黙々と動いている。
「兄様はお城で何やらお話があるのだそうです。ですから独りで来てしまいました。右京様も、もうお出掛けになったのですね……」
と、少々詰まらなそうな表情をしてみる。女御一人では危険な森──と、一つ説教をしたいところではあったが、わざわざそうまでして来てくれた秋を想えば、その言葉を喉元へ押しやらずにはおられなかった。