黒蝶Ⅱ -ふたりの総長に奪われて-
「そりゃ羨ましいだろ」
俺は元々可愛い女の子が好きだし。
発散するものもしてなくて、結構ストレスも溜まってんだよねえ。……でも雫ちゃんにああ言われて、ほかの子に行く気は失せてるし。
普段はまつりのガードが固いせいで、早々ふたりきりにもなれない。
スマホで連絡すれば返事は来るし、どうしようもなく声が聴きたい夜も、結局一歩踏み出せずに着信ボタンを押せずにいる。
……本人にも好きなことはバレてるけど。
なんていうか、やっぱり、距離を感じてる。
まつりほどグイグイ進められないし。
……あー。今まで女の子ってどうやって口説いてたっけ?
「まつりに"ずるい"って言ってみたら?」
言えたら苦労しねえんだよ。
名目上とはいえ付き合ってるわけだし、まつりが雫ちゃんにベタベタするのはわかる。
裏を返せば、俺がそこに割って入るのはルール違反なわけで。
でもどうしたって気持ちはなくならないし、笑いかけてくれる雫ちゃんのことを好きだと思う。
これでもちゃんと我慢してんだよ。
最初は遊び相手になってもらおうとか思ってたっけ、俺。
無理だな、どう考えても。
仮に遊び相手になってくれてたとしても、途中で惚れてしまって歯がゆくなってたと思う。
それくらい魅力的な、俺らの姫。
「……誘ってみよっかなぁ」
まつりも散々迫って断られてたはずなのに、ふたりで出掛けてるみたいだし。
わざとらしく聞こえる俺の独り言に、稜介はくすくす笑ってた。
……快斗は快斗でどうしたいんだか。