黒蝶Ⅱ -ふたりの総長に奪われて-



その後も結局、ふたりが倉庫に来ることはなく。

途中で用事があって階下に行くと、下っ端の子たちに「今日姫と総長はデートですか?」と尋ねられた。俺に聞かないでくんねえかな。



「そうなんじゃねえの?

稜介しか、雫ちゃんが来ないの知らなかったし」



そんなにふわっとしてるってことは多分、まつりが一緒だから特に心配することもないって話だと思うけどな。

そうじゃないと、姫のそばに誰か置いてるだろうし。



でもこの間まつりが母親から買い出し頼まれて稜介と出掛けたら、姫が従兄弟と買い物してたって聞いたけど。

……身の危険を感じてなさそうだな、雫ちゃん。



本当に何かあったら困るから、幹部をそばに置いてるのに。

次そうなったら、ちゃんと伝えた方がいいかも、なんて思いながら幹部室へともどる。



「……あれ、まつりだ」



冷蔵庫から飲み物をとって。

俺が定位置に座った瞬間に鳴る、机に置かれた稜介のスマホ。




「なになにー? なんか用事ー?」



「なんだろう、雫ちゃんと一緒のはずなのに」



言いながら通話にした稜介が、そのままスピーカーへと切り替える。

どうやら俺らにも会話は聞かせてくれるらしい。



「もしもし。どしたの、まつり」



『雫がいなくなった』



「……え?」



……は、あ???



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