黒蝶Ⅱ -ふたりの総長に奪われて-
まつりにそう命じられた俺たちは、すぐに倉庫を出て黒百合へと向かった。
それから10分後にはまつりと合流し、現在黒百合倉庫前。
「見当はついてるって言うけどよー。
マジでここにいんのか?」
レンガ造りの、無駄に金がかかっていそうな倉庫を見上げて快斗が尋ねる。
まつりはどこで犯人をしぼったのか、「まあ間違いないだろうな」と自信ありげだ。
まあ別に俺らも、まつりが間違ってるとは思ってねえけど。
だからこそ、言われるがままにここに来てるわけだし。
「どうやって、」
どうやって中に入るつもり?と。
俺が尋ねるより早く、30センチほど開きかけていたシャッターを足で押し上げるまつり。かなのり力を加えたようで、大きな金属音とともに勢いよく跳ね上がった。
……シャッター、壊れてねえといいな。
「ちょっ、ちょいまてふざけんな……!
んな蹴り上げ方したらウチの自慢のシャッター壊れんだろ!!」
「あ? ンなに脆くねえだろ」
「やべえ音してたじゃん!!」
なんだか泣きそうな顔をしながらまつりに駆け寄る、黒百合のトップ。
見るたびに思うけど、なんでこの男に暴走族の総長がつとまってんだろう。どう見てもお坊っちゃまなのに。
「むしろシャッター壊れるだけで済んだならありがたく思え。
──俺の女、一体どこに連れ去ったんだよ。カエデ」
「ヒィッ」
まつりに詰め寄られて、顔面蒼白のカエデ。
あと10秒で泣くだろうな、なんて、この場に似つかわしくないことを思いながら様子を見ていれば。