黒蝶Ⅱ -ふたりの総長に奪われて-
早くもダルい雰囲気が流れているなと思っていたら、二階から雫ちゃんが顔を覗かせた。
その腕には真っ白なふわふわの猫が抱かれている。……もしかしてさっき言ってた"ダルマ"って、その猫の話?
「雫ちゃーん、お迎え来ちゃった。
せっかくもうちょっと一緒に過ごしたかったのに」
「わたしも楽しかったけど、今日はもうダメそうね」
下までおりてくると、雫ちゃんの腕から猫が飛び降りる。
屈んだ蜜柑が「ダルマぁ」と猫なで声でその子を撫でた。
やっぱりその猫がダルマだったらしい。
ネーミングセンスどうなってんだよ。
「……怒ってる?」
不安はなかったにしろ、一応心配していることは伝わっているようで。
まつりを少し窺うように見上げる雫ちゃん。「怒ってない」と返したまつりの声は落ち着いてるし、実際怒っているようには見えない。
「知らない相手にはついていくなよ。子どもでも分かるだろ」
「……だって」
「だってじゃねえんだよ。
今回は蜜柑とカエデの仕業だって分かってたから口うるさく言うつもりはねえけど。俺がいつも心配してるの知ってんだろ」
「……ごめんなさい」
……雫ちゃんだけが悪いわけじゃねえと思うけどな~。
まあ気軽に出歩いたりしてるから、もうちょっとそこの危機感だけは持ってほしいか。
「ん。帰るぞ」
雫ちゃんの頭を撫でて、まつりが手を引く。
それから先に倉庫を出ようとして、何かを思い出したように振り返った。