黒蝶Ⅱ -ふたりの総長に奪われて-



「蜜柑。雫に余計なこと話してねえだろうな」



「あたしがそんなダルい女に見える?」



「はっ、念のためだよ」



……そういや。

まつりは基本的に女の子と仲良くしねえけど、蜜柑とは普通に話してる。まあ、だからといって何もねえし、蜜柑の性格ゆえにだとは思うけど。



「じゃね、雫ちゃん。

ほらカエデ、いつまでめそめそしてんの!」



「め、迷惑かけてすみませんでしたぁ」



笑顔の蜜柑と半泣きのカエデに見送られ、黒百合を後にする。

相変わらずだな。




……っていうか、俺ら来る必要なかったんじゃね?

まつりだけで全然解決できる話だったじゃねえか。



「何にもなくてよかった。雫ちゃん、怪我とかしてない?」



「うん、大丈夫。

どっちかというと、わたしが勝手について行っちゃっただけだし」



蜜柑ちゃんに声掛けられて、と。

特に反省の色の見えない彼女の姿にまつりはため息をついて「お前な」と零しているけれど、雫ちゃんはケロッとしていた。……何も気にしてない、のか?



前々から彼女は肝が据わっているように見えるけど。

俺らのことを知って驚くこともなければ怖がることもしない。そしてもちろん、媚び入るようなことだってしない。



「稜介。このあと空いてるか?」



「このあと?

ごめん、父さんに呼ばれてるんだよね」



< 8 / 15 >

この作品をシェア

pagetop