【短編】会いたいと切に願う
三度目ともなれば、彼の行動は予測済み。
こうやって手を握られ引っ張っていかれることが嬉しかった。
ドキドキと。
久しぶりに会えた彼に胸が鳴り出し、口元は緩んでいく。
「ねぇー、今日はどこに連れて行ってくれるのー?」
「ん、じゃあ問題」
「えっ、まーたー?」
なぞなぞは無理、解けない!
そう言えば、この前の答えも聞いてないし。
そんな私なんてお構いなしに彼は問題を出してきた。
「可愛いと言うひいらぎが好きな場所は〜?」
か、か、可愛……い?
彼の口から何度か聞いているはずの単語なのに、激しく心臓が鳴り出す。
うーん。
このトキメキはやっぱ、恋?
これが本当に人を好きになるってことなのかな。
今までこんなにも胸が高まることも、会いたいって思うこともなかった。
結婚願望強いくせに恋愛関係はあっさりしている。
相手が会いたいって言ったら会って、好きって言葉も聞かれたら言って、告白だって私からはしたことがなかった。
そんな私が……
恋、してるーーー?
「今日も時間切れー」
「えっ、あっ。ちょっと考え事してたのよ!」
「じゃあ分かる?」
「……うっ。分かりません」
人差し指で顔をポリポリと掻きながら、愛想笑いを浮かべてみた。
だって、やっぱ私頭固いもん。
そんな様子を見て今日も笑いだす彼。
不意に私と目が合うと優しげな表情を浮かべ、離した手をそっと肩に乗せて抱き寄せてきた。
うわぁーっ!!
今までで一番緊張するーっ!!
どうしよう私。
彼を意識しすぎて心臓がバクバクしてきた〜っ。
そんな風に一人でテンパっている私の耳元で、彼はそっと囁いてきた。
「前見て」
「へっ?」