【短編】会いたいと切に願う
「分かんないよ。ただ、私は頭を悩ませるくらい難しかったから、すごいよ……多分」
「やっぱ、ひいらぎ大好き」
えっ、えーーーっ!!
いや、大好きもなんだけど、だけど……。
ねぇ、思いっきり抱きしめられてますよ?
私、抱きしめられてるーーー!!
落ち着け、自分。
このドキドキが彼に伝わるなんて恥ずかしい。
えっと、何か言わなきゃ……えっと。
「ひ、暇人なんだね?」
って何言ってんのよ私ー!
「おぉ、暇人だよ〜」
って普通に返事が返ってきた〜。
内心焦っていていっぱいいっぱいの私。
冷や汗なんだかよく分からない汗は流れてくるし、ドクンドクンって心臓が飛び出しそうなほど大きく鳴るし。
それに比べて冷静に見える彼。
抱きしめていた手で私の髪をすくいとり、優しく撫でだした。
そして、ゆっくりと体を離した。
うぅ……。
やっぱり離れると寂しい。
けど、不思議なことに彼が離れたら体は温かくなった。
何でだろ?
「なぁ、今度はひいらぎの話聞かせて?」
「私の話?」
「青春かえせーって!!」
……えっと。
「あーっ! そうだった。聞いてくれる?」
私の花の十代を奪った冬真。
あ、冬真って元彼……ってさすがに覚えてるよね?
「もちろん」
彼の言葉に甘えて、私は自分のことを話し始めた。
こんな風に自分のことを話すこと自体初めてのことだし、こうやって彼とゆっくり話すことも初めてだった。