【短編】会いたいと切に願う
若いうちにたくさん子供を産んで賑やかな家庭を作って、いつまでも家族に囲まれて暮らしていくこと。
これが私の夢だった。
一人っ子の私は共働きの両親に育てられ、一人寂しい時間を幾度となく過ごしてきた。
だからかな、兄弟や姉妹のいる子が羨ましくて。
家に帰ったら「おかえり」って言ってくれる両親がいる子が羨ましくて。
たくさん愛情を注いでもらってきたんだけど、やっぱり大家族っていうのに憧れた。
だけど、まったく両親に憧れていないわけじゃないよ?
たくさん子供が欲しいから若いうちに結婚。
って言うのもあるけど、自分の両親が若くて綺麗でかっこいいから、自分もあんな風になりたいって憧れていたから、早くに結婚したかったの。
三年も付き合えば結婚って見えてくるでしょ?
私はこのまま冬真と結婚するんだって信じて疑わなかった。
けど、突然の別れ。
結婚するともなれば、それなりの付き合いしてからじゃないとできないでしょ?
ってことは、またイチから!!
それだけ結婚遅くなるじゃんって。
だから、私の貴重な青春時代かえせーって思ったのよね。
淡々と話す私の話を、彼は静かに真剣に聞いてくれていた。
「ひいらぎは両親のことが本当に好きなんだな」
優しく掛けられた声に、胸の奥が熱くなりながら頷いた。
私が欲しい言葉を掛けてくれる彼に、心を揺さぶられる。
「また、ひいらぎのいいとこ見っけ」
そう言って髪に触れるか触れないかくらいのキスをしてきた。
……私、彼のこと好き。
本気で確信した瞬間だった。
「あぁ〜、帰らないと。ごめんな、またな〜!」
……。
はいーーーっ!?
またですか?
もうっ、折角気持ちに気づいたってのに。
「ねぇー、次も雪が降ったら会えるの〜?」
「おうっ」
返事が聞こえた時には、彼の姿は跡形もなく消えていた。
ま、いっか。また会えるって言ってくれたし。
私は今日は叫ばずに、一人歩き始めた。
……これが、一五への気持ちを確信した日のことだった。