【短編】会いたいと切に願う

「クスッ」

「あーっ、また私のこと笑ったね〜?」



触れている彼の頬の筋肉がピクッと動いた。



「やっぱひいらぎって、変わってるし面白いよなって思って」

「何よそれー!!」



私は思いっきり頬を膨らませる。

そんな私の頬に今度は彼の手がそっと触れてきて、



「大好きってことだよ」



今度こそ間違いなく、熱い眼差しで見つめられていた。

鋭い瞳に吸い込まれそうになる。



「ねぇ……もう、いなくなったりしないよね?」


「んー。あることをすれば、ずっと一緒にはいられるけど
それをしないと雪の降る日にしか会えない。それに冬の間だけ……立春の前日までしか会えない」

「あること? 何でもいい!! あなたといれるなら、何だってするわよ!!」



ものすごい剣幕の私に一瞬驚きの表情を見せながらも、嬉しそうに口元を緩ませていく。



「セツ……、俺の名前。そう呼んで?」

「セツ」



やっと聞けた本当の名前。

口に出すのがもったいないくらいだった。



「それを実行したら俺から一生離れられなくなるよ? ひいらぎ、それでもいいの?」



そんな風に言うセツに向かって、



「私の気持ちを見くびらないでよね? セツと一生離れられない、願ったり叶ったりだし!! 私は、セツがいいのっ!!」



すると、頬に触れていた手を離したセツが、勢いよく抱きついてきた。

力強い腕に包まれて、二人の体温が溶け合うように重なり合う。


セツ……。



「じゃあ、問題」

「はいぃ〜?」



ここまできて問題?

……らしくて、いっか。





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