ふたりの時間を戻して ―幼なじみの恋―
また後日、出向かねばならないが、とにかく一度戻ってゆっくり休みたかった。
圭司は紗希を自分のマンションに案内した。
「圭ちゃんのマンション、初めて」
「あぁ。俺ん家でゆっくりすればいい。ここはあいつも知らないからな。まぁ、今日は帰してもらるかどうか、わからないだろうけど」
「……うん」
圭司は紗希の髪を優しく撫でた。
「紗希を不安にさせて追い詰め、助けて信用させて心を開かせる、そう考えたんだろう。いつからお前の職場を割りだしたのか知らないけど、もしかしたら俺の存在を知って慌てたのかもしれない」
「……でも、どうして、そんなこと」
「よりを戻したかったんじゃないのか? 失ったモノが大きかったって気づいて」
紗希の目が涙に滲んだ。
「俺もお前を失ってから気づいた。だからあまりひどくは言えない。だけど、紗希、俺はもう絶対お前を手放したりしない」
大粒の涙がポロリとこぼれ落ちた。
圭司の愛が紗希を包み込み、その深さを思い知った。
迷惑をかけたくない、仕事の邪魔をしてはいけないなどと考え、山下を信用し、なにかあればアテにしようと考えた自分が情けなかった。
紗希は込み上げてくる激しい想いを耐えきれず、圭司にすがりついた。
「圭ちゃん! 圭ちゃん!」
泣きながらしがみつく紗希を圭司がギュッと抱きしめ返す。
「圭ちゃん!」
「紗希、忘れろ」
「ふえぇ」
「もう終わったことだ。考えることもない。忘れてしまえ」
少し体を離し、唇を重ねる。
深いキスに紗希の意識はゆっくりと溶かされていく。
「んん……はぁ」
圭司の唇が首筋を辿って鎖骨に至った。
「け、い、ちゃん……」
「俺がずっとお前を守るから。安心して、紗希。自分の幸せだけ考えてろ」
するすると服が脱がされていく。
「圭ちゃん、好き、大好き。愛して、お願い」
紗希は目を固く閉じ、シーツを握りしめて圭司の想いを受けとめた。
互いの強い気持ちが炎のように燃え上がる。
このまま溶け合い、世界から消えてしまってもいい──そう思うほど圭司が恋しく、愛しい。
体中で圭司を感じたかった。
女の内側で、熱く、激しく。
「紗希」
名前を呼ばれて紗希は息を止めた。
反射的に腕をのばし、ぐっと強く抱きしめた。
しばらく動けず、乱れた息だけが部屋中に響く。
互いの体温を感じつつ、寄り添って天井を見つめていた。
「圭ちゃん」
紗希がそっと呼びかけると、圭司は顔を向け、真面目な顔をして頬にキスをした。
「紗希、結婚してくれ」
紗希の目が大きく見開かれる。
「圭、ちゃん?」
「これ、本気の証」
圭司は腕を伸ばしてベッドの脇からなにかを手にした。空いているもう片方の手で紗希の左手を取る。掌の上に置かれたのは銀色の指輪だった。
「解決したら連れ込もうと思って用意してたクリスマスプレゼント。サイズがわからなかったから、とりあえず店員さんに相談して標準サイズを用意した」
嬉しそうに言いながら、紗希の薬指にそっと入れた。合わせたかのようにピタリと収まった。
「ぴったり」
紗希の瞳からまたしても大粒の涙が流れ落ちた。
「愛してる、ずっと、今までも、これからも。後悔し続けた五年間を取り戻したいし、俺たちだけの時間を築いていきたい。イヤなことは全部俺が引き受ける。だから、紗希、俺と結婚してくれ」
ハラハラと流れる涙が紗希の心を映していた。
「愛してる」
圭司は紗希の瞳から流れる涙をそっと拭いつつ、もう一度囁いた。
「クリスマスにプロポーズなんて、圭ちゃんかっこよすぎ」
「そうか?」
「私も、圭ちゃんを心から愛してる。誰よりも。お願い、ずっと圭ちゃんの傍にいさせて」
「ずっと、一緒だ。約束だから」
「うん。約束だから」
互いを想いあいながら告げられず、すれ違ってしまってから五年。
二人の時間がようやく重なり、動き始めた。
終
圭司は紗希を自分のマンションに案内した。
「圭ちゃんのマンション、初めて」
「あぁ。俺ん家でゆっくりすればいい。ここはあいつも知らないからな。まぁ、今日は帰してもらるかどうか、わからないだろうけど」
「……うん」
圭司は紗希の髪を優しく撫でた。
「紗希を不安にさせて追い詰め、助けて信用させて心を開かせる、そう考えたんだろう。いつからお前の職場を割りだしたのか知らないけど、もしかしたら俺の存在を知って慌てたのかもしれない」
「……でも、どうして、そんなこと」
「よりを戻したかったんじゃないのか? 失ったモノが大きかったって気づいて」
紗希の目が涙に滲んだ。
「俺もお前を失ってから気づいた。だからあまりひどくは言えない。だけど、紗希、俺はもう絶対お前を手放したりしない」
大粒の涙がポロリとこぼれ落ちた。
圭司の愛が紗希を包み込み、その深さを思い知った。
迷惑をかけたくない、仕事の邪魔をしてはいけないなどと考え、山下を信用し、なにかあればアテにしようと考えた自分が情けなかった。
紗希は込み上げてくる激しい想いを耐えきれず、圭司にすがりついた。
「圭ちゃん! 圭ちゃん!」
泣きながらしがみつく紗希を圭司がギュッと抱きしめ返す。
「圭ちゃん!」
「紗希、忘れろ」
「ふえぇ」
「もう終わったことだ。考えることもない。忘れてしまえ」
少し体を離し、唇を重ねる。
深いキスに紗希の意識はゆっくりと溶かされていく。
「んん……はぁ」
圭司の唇が首筋を辿って鎖骨に至った。
「け、い、ちゃん……」
「俺がずっとお前を守るから。安心して、紗希。自分の幸せだけ考えてろ」
するすると服が脱がされていく。
「圭ちゃん、好き、大好き。愛して、お願い」
紗希は目を固く閉じ、シーツを握りしめて圭司の想いを受けとめた。
互いの強い気持ちが炎のように燃え上がる。
このまま溶け合い、世界から消えてしまってもいい──そう思うほど圭司が恋しく、愛しい。
体中で圭司を感じたかった。
女の内側で、熱く、激しく。
「紗希」
名前を呼ばれて紗希は息を止めた。
反射的に腕をのばし、ぐっと強く抱きしめた。
しばらく動けず、乱れた息だけが部屋中に響く。
互いの体温を感じつつ、寄り添って天井を見つめていた。
「圭ちゃん」
紗希がそっと呼びかけると、圭司は顔を向け、真面目な顔をして頬にキスをした。
「紗希、結婚してくれ」
紗希の目が大きく見開かれる。
「圭、ちゃん?」
「これ、本気の証」
圭司は腕を伸ばしてベッドの脇からなにかを手にした。空いているもう片方の手で紗希の左手を取る。掌の上に置かれたのは銀色の指輪だった。
「解決したら連れ込もうと思って用意してたクリスマスプレゼント。サイズがわからなかったから、とりあえず店員さんに相談して標準サイズを用意した」
嬉しそうに言いながら、紗希の薬指にそっと入れた。合わせたかのようにピタリと収まった。
「ぴったり」
紗希の瞳からまたしても大粒の涙が流れ落ちた。
「愛してる、ずっと、今までも、これからも。後悔し続けた五年間を取り戻したいし、俺たちだけの時間を築いていきたい。イヤなことは全部俺が引き受ける。だから、紗希、俺と結婚してくれ」
ハラハラと流れる涙が紗希の心を映していた。
「愛してる」
圭司は紗希の瞳から流れる涙をそっと拭いつつ、もう一度囁いた。
「クリスマスにプロポーズなんて、圭ちゃんかっこよすぎ」
「そうか?」
「私も、圭ちゃんを心から愛してる。誰よりも。お願い、ずっと圭ちゃんの傍にいさせて」
「ずっと、一緒だ。約束だから」
「うん。約束だから」
互いを想いあいながら告げられず、すれ違ってしまってから五年。
二人の時間がようやく重なり、動き始めた。
終