ふたりの時間を戻して ―幼なじみの恋―
紗希は火照る体を圭司に預け、求められるままに受け入れた。
アルコールがどこか夢のような錯覚を与えるものの、受ける刺激は紗希を狂わせる。
温かい――そう思う。久しぶりの温かさに紗希は無意識のまま強くしがみついた。
ひと肌の温かさはなぜか不思議となんとも言えない幸福を感じさせる。どれほど強くいようとしても、この温かさに包まれたら心は脆く崩れ、得ようとして求めてしまう。そして全身から力を奪い、なすすべなく受け入れてしまう。
そうやって、今では失敗だったと後悔する過去を手にしてしまったのだ。
手繰り寄せ、手に入れようとしたのは自分だ。
(もうしないって……決めたのに。でも、この人は圭ちゃん。ずっと好きだった人。他の子を選ばれてしまったから、あきらめた……)
首筋に熱い吐息を感じ、紗希は背に回している両腕に力を込めた。
(今なら、圭ちゃんを求めてもいいの?)
そう思う自分と、ダメだと自制する自分がいる。
(うぅん、その資格はない。私はもう、あの時の私じゃない。もう、すっかり穢れてしまった)
結婚し、命を失い、離婚した女。
それはけっして人として堕ちたわけではないことくらい、頭ではわかっている。どこも悪くないことくらい。
だが――
圭司に対してだけは、穢れたと思ってしまう。
圭司に対してだけは、綺麗な身でいたかった。
だから圭介を求めることはできないと思っているのに――
呆然としながらも目を開ける。
確かに圭司の顔が見えるがぼやけていてはっきりしない。それよりも下腹部の大事な部分がジンジンと響き、震えていることのほうが紗希の意識を取る始末だ。
(はげし、かった……でも、気持ちよかった。こんなに、気持ちよくイケたの、いつ、ぶり? 妊娠する前、よね?)
「紗希、大丈夫か?」
紗希はぼんやりする目でもう一度圭司を見た。
(圭ちゃん……私……)
その瞬間、紗希の目が大きく見開かれた。
「け、圭ちゃん!」
「お?」
きょろきょろしながら周囲を確認する。
ホテルの一室だと理解すると、紗希の顔が赤くなり、裸の姿に激しく動揺した。
「紗希、お前、もしかして、覚えてない?」
「…………」
「うわ、それ、傷つく」
「…………」
「でもま、俺は得したからいいけど」
「…………」
どうしよう、そう思うが、どうしようもできなかった。
もう、遅い。
「あ……えと、うぅん、覚えてる。かなりヤバかったけど、覚えてるよ」
「ホントかよ」
「ホントよ。でも、その、自分に都合のいい夢じゃないかって気持ちも、その」
紗希は布団を握りしめながら必死に答えた。
アルコールがどこか夢のような錯覚を与えるものの、受ける刺激は紗希を狂わせる。
温かい――そう思う。久しぶりの温かさに紗希は無意識のまま強くしがみついた。
ひと肌の温かさはなぜか不思議となんとも言えない幸福を感じさせる。どれほど強くいようとしても、この温かさに包まれたら心は脆く崩れ、得ようとして求めてしまう。そして全身から力を奪い、なすすべなく受け入れてしまう。
そうやって、今では失敗だったと後悔する過去を手にしてしまったのだ。
手繰り寄せ、手に入れようとしたのは自分だ。
(もうしないって……決めたのに。でも、この人は圭ちゃん。ずっと好きだった人。他の子を選ばれてしまったから、あきらめた……)
首筋に熱い吐息を感じ、紗希は背に回している両腕に力を込めた。
(今なら、圭ちゃんを求めてもいいの?)
そう思う自分と、ダメだと自制する自分がいる。
(うぅん、その資格はない。私はもう、あの時の私じゃない。もう、すっかり穢れてしまった)
結婚し、命を失い、離婚した女。
それはけっして人として堕ちたわけではないことくらい、頭ではわかっている。どこも悪くないことくらい。
だが――
圭司に対してだけは、穢れたと思ってしまう。
圭司に対してだけは、綺麗な身でいたかった。
だから圭介を求めることはできないと思っているのに――
呆然としながらも目を開ける。
確かに圭司の顔が見えるがぼやけていてはっきりしない。それよりも下腹部の大事な部分がジンジンと響き、震えていることのほうが紗希の意識を取る始末だ。
(はげし、かった……でも、気持ちよかった。こんなに、気持ちよくイケたの、いつ、ぶり? 妊娠する前、よね?)
「紗希、大丈夫か?」
紗希はぼんやりする目でもう一度圭司を見た。
(圭ちゃん……私……)
その瞬間、紗希の目が大きく見開かれた。
「け、圭ちゃん!」
「お?」
きょろきょろしながら周囲を確認する。
ホテルの一室だと理解すると、紗希の顔が赤くなり、裸の姿に激しく動揺した。
「紗希、お前、もしかして、覚えてない?」
「…………」
「うわ、それ、傷つく」
「…………」
「でもま、俺は得したからいいけど」
「…………」
どうしよう、そう思うが、どうしようもできなかった。
もう、遅い。
「あ……えと、うぅん、覚えてる。かなりヤバかったけど、覚えてるよ」
「ホントかよ」
「ホントよ。でも、その、自分に都合のいい夢じゃないかって気持ちも、その」
紗希は布団を握りしめながら必死に答えた。