ツンデレ騎士様が溺愛してきます。
14:のろい、ではなかった。
『呪い』ではなく、『呪い』、ってどういうことでしょうか?
「好きでもない相手に、愛を囁かせるなんて非人道的なことを、この私がするはずないじゃない?」
好きでもない相手、という部分を疑問に思い、首をひねっていましたら、ラルフ様が鼻で笑われました。
「どの口が『非人道的』などと――――ぐっ!」
真っ赤なドレスがひらりと舞った瞬間、ラルフ様のお腹に魔女様のピンヒールがめり込んでいました。
「シバくわよ?」
「すでに蹴っているでしょうが」
「あら? また泣かされたいのかしら?」
「もういい大人ですので、泣きません。ひいおばあさま?」
チィィィィッと盛大な舌打ちが聞こえました。あと、『ひいおばあさま』という謎の単語も気になります。
気になることばかりです。
――――って! え⁉ もしかして? ラルフ様と魔女様はご親族⁉
「あら? イレーナちゃんが固まっているわよ」
ポカーンとしていましたら、魔女様にツンツンと頬を突付かれました。
「勝手に触れないで下さい!」
「あら? この様子じゃ、まだ貴方のものではない、のよねぇ?」
「…………チッ」
「アーッハッハッハ!」
ラルフ様が苦々しいお顔で舌打ちし、魔女様は高笑いされています。
私は話の展開が早すぎてついていけません。
確認したいことが多々あるのですが、お二人が落ち着かれるまでは聞けそうにないことだけはわかりました。
「ハァ、笑ったわ。と・に・か・く! イレーナちゃんが解呪していいのなら、してあげるわよ」
「えらく上からですね」
「あら。だって私、偉いもの」
「「…………」」
たしかに。
国王陛下の次に発言力をお持ちなので、どえらく偉いことに間違いないですね。
「えと、お願いいたします」
「えー……はぁい。仕方ないわねぇ」
渋々ではありましたが、解呪していただけました。
解呪していただけたので、家に帰ることになると思っていたのですが、何故かラルフ様のお屋敷に戻ってきました。
しかも、何故か当たり前のように指を絡めて手を繋がれています。
「あの……手…………」
「……サロンで話そう」
「は、はい」
どうやら手指は解放してもらえないようです。
しかも、先程よりも強く握られています。
何故でしょうか?
――――はっ! もしや!
あれですね、あれ。
口封じ的なあれ。
大丈夫です! 騎士団であったことは一切他言しません!
この三日間のことも一切他言しません。
ラルフ様の名声は私が死守しますので、大丈夫ですっっっ!