恋がはじまる日 (おまけ)

 教室に入ると、丁度廊下側の席に集まって話していた桜ちゃんと雪乃ちゃんに声を掛けられた。

「美音ちゃん、おはよう!」
「あ、桜ちゃん雪乃ちゃんおはよう!」

 桜ちゃんは私と一緒に教室に入ってきた藤宮くんを見て、驚いたようだった。

「あれ、藤宮くんと一緒に来たの?」
「あ、うん」

 そうだ、この二人にもちゃんと伝えないと。私が藤宮くんを好きなこと。

 雪乃ちゃんは相変わらず大人っぽく笑うと、

「美音、昼休み、報告待ってるから」

といたずらっぽくウインクして笑った。雪乃ちゃんにはお見通しなのかもしれない。桜ちゃんは不思議そうに首を傾げている。私は「うん!」と言って、自分の席に向かう。


 私達が鞄を下ろして、教科書を机に入れていると、眠そうに椿が登校してきた。

「はよーっす」


 あ、私、椿に告白されたんだよね…。しかもそれを断ってしまった。

 気まずさから、彼とどう接していいか分からなくなってしまう。いつも通り普通に話し掛けてもいいのかな。振られた相手なんか、もう話したくもないかな。


「あ、お、おは、おおおはよう椿!」

 私がどぎまぎした挨拶を返すと、椿はぷっと吹き出して笑った。


「あはは、なんだよ美音!その挨拶」

「え、えっと」


 椿は普段と変わりなく、いつも通りに笑ってくれる。しかしいつも通りに見えて、その笑顔はやっぱりどこか寂しそうで。


「普通でいいって。美音と疎遠になる方が嫌だっつの。これからもずっと幼なじみだろ?」


 椿がものすごく気を遣ってくれているのは分かっている。私にはそんな資格はないのかもしれないけれど、その好意を無駄にしたくない。今はお言葉に甘えさせてもらうことにする。


「うん!ありがとう!」

「おう!」

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