恋がはじまる日 (おまけ)

 その日の昼休み、私は桜ちゃん、雪乃ちゃん、椿をご飯に誘って、私と藤宮くんは想いを伝え合ったことを報告した。

「じゃあ、二人は付き合うことになったんだ?」
という雪乃ちゃんの質問に対して、私はちょっと困ったように返答するしかなかった。

「うーん、それが良く分からなくて…」

「分からない?」と三人共口を揃えて、首を捻る。

「両想いなのに、付き合わないなんてことある!?」

 桜ちゃんがやや前のめりで聞いてくる。


「藤宮って、もしかして意外と不器用?恋愛馴れしてそうなのに」

 雪乃ちゃんは紅茶の紙パックを飲み干しながら、うーんと思案げな表情を見せる。そこに椿も乗っかるように口を開いた。


「あー、そうかもな。こんなこと言いたくねえけど、美音と藤宮、意外と似てるとこあると思う。鈍感っつーか、相手のことばっか考えてて、自分の気持ちが疎かっつーか」
「そう、かな…?」

「とにかく、そこんとこちゃんと話し合いなさい!美音が一人で考えてても仕方のないことよ。藤宮に直接聞くこと。絶対ないと思うけど、付き合わないってことになるようだったら私を呼んで。鉄拳制裁加えるから」
「私も美音ちゃんの力になるからね!」

 雪乃ちゃんと桜ちゃんは力強く私の手を握る。


「ありがとう~!藤宮くんにちゃんと確認してみるね!」

「ま、三浦には悪いけど、私と桜は美音の恋を応援しているから」


 そう言ってにやりと笑う雪乃ちゃんに、椿は「早瀬、まじで苦手だわ…」と、大袈裟に悲しんで見せた。


 そんな賑やかなお昼休みも終わって、あっという間に放課後になった。

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