恋がはじまる日 (おまけ)

「手伝ってくれてありがとう」

「うん!」


 英語の教務室に無事ノートを運び終え、二人で教室へと歩みを進める。


 すると山下くんが沈黙に耐えかねたのか、徐に口を開いた。


「佐藤さんは、椿と幼なじみなんだよね?」

「うん、そうだよ」

「椿と佐藤さん、よく一緒にいるし、仲良さそうだけど、二人は付き合ってんの?」

 私は緩く頭を振る。

「付き合ってないよ。椿は大事な幼なじみなの」


「そうなんだ、…じゃあさ、」


 山下くんはそこで言葉を切ると、歩き続けていた私の腕を掴んだ。私は驚きで振り返る。


「椿と付き合ってないなら、俺と、」


 そこまで言って山下くんの声は途切れた。


 と同時に、後ろから肩を抱かれた私はよろめいて後退る。両肩を抱かれたまま、後ろの誰かに身体を預けるように寄りかかってしまう。

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