恋がはじまる日 (おまけ)

「俺の彼女に何か用?」


 後ろからひどく不機嫌そうな声が聞こえてくる。

 私は後ろから抱き着かれたまま、なんとか首だけを後ろに回す。


「ふ、藤宮くん!?」

「お前さ、お人好しも大概にしろよ」

「え、ノート運びを手伝ってただけで…」

「ふーん、あっそ、帰るぞ」

「え、あ、待って!」


 藤宮くんはさっさと教室へ歩いて行ってしまう。

 優しく暖かな温もりが離れてしまって、少し寂しさを感じた。


 ていうか今!後ろから…!


 今更になって先程の出来事に身体中が熱くなる。



 目の前でぽかんと口を開けている山下くんに、「ごめん、先帰るね!」とだけ告げて、私は藤宮くんの後を追った。


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