恋がはじまる日 (おまけ)

二度目のバレンタインデー

2024年2月14日 バレンタイン記念ショートストーリー



 二月十四日。バレンタインデー。

 その日は私達にとって、特別な日だった。

 私と藤宮くんが想いを伝え合った日。

 お付き合いして、一年記念日です。



 私達はついに高校三年生になっていた。大学受験の真っ只中である。


 三年生の二月となると、授業はもうほとんどなくて、自由登校の日が多い。学校で勉強するよりは家の方が落ち着く人は家で勉強するし、家だと集中できない人は学校に来て教室や図書室で勉強する。


 私は有難いことに学校から推薦が貰えたので、年内に大学を決めることができた。


 まだ将来についてこれ、としっかり決めたわけではないけれど、文学部のある大学を選んでみた。将来の仕事は、大学に通いながら考えてみる予定だ。


 自由登校の今日も、やっぱり出席率は低かった。教室には半数に満たない生徒達が机に向かっている。


 家にいても特にすることがないので、なんとなく私は毎日学校に来ている。たまに引退したサッカー部を覗いてみたり、今のうちに何か資格が取れないか図書室で調べたりと、ゆったりとした時間を過ごしている。


「よ!美音」


 ダッフルコートにマフラーを巻いて防寒ばっちりの幼なじみの椿が、前の席に腰を下ろす。


「おはよう、椿」


「今日めっちゃ冷えるなぁ~」


「午後雪かもって」


「まじか!そりゃ寒いわけだ」


 鞄を下ろした椿が、「自販機行かね?」と言うので「行く!」と一緒に廊下に出る。私もちょうど温かい飲み物がほしいと思っていたところだ。


 昇降口に面した自動販売機にやってくると、開け放たれた昇降口の扉から寒気がダイレクトに入ってきていた。


「「さっむっ!!」」


 二人で声を揃えて身震いする。


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