恋がはじまる日 (おまけ)
自動販売機にあったか~いと表示されている飲み物から、ココアを選択してボタンを押す。椿はコーンポタージュを買っていた。
「椿は今日どうするの?」
私がそう問いかけると椿は「うーん」としばし思案する。
椿も私と同じように推薦で大学が決まっていた。スポーツ推薦だと言っていたっけ。勉強はする予定がなさそうだけれど、何か予定があって登校したのかな。
「まぁ、ちょっと陸上部顔出して、その後は音楽室行くかな。あいつも来てるかもしれないし」
「そっか」
音楽室か。私は少し頬を緩ませながら椿の顔を覗き込む。
「な、なんだよ…」
椿は恥ずかしそうに顔を背ける。
「ううん!なんでも!」
椿の恋を私も応援したい!今はあまりつっこまず、優しく見守ることにする。二人がいつもどんな感じなのか、すっごく気にはなるけれど。
「あ、」と呟いた椿は、「美音、悪い!先行くな」と言ってそそくさと行ってしまう。
「え?椿?」
急にどうしたと言うのだろうか。何か嫌なこと言っちゃったかな?そう少し不安に思っていると、頬に氷が触れたようなとてつもない冷たさを感じた。
「ひょぇっ!!?」
あまりの冷たさに思わず変な声を上げてしまうと、くっと笑う声が近くから聞こえた。