恋がはじまる日 (おまけ)

 自動販売機にあったか~いと表示されている飲み物から、ココアを選択してボタンを押す。椿はコーンポタージュを買っていた。


「椿は今日どうするの?」


 私がそう問いかけると椿は「うーん」としばし思案する。


 椿も私と同じように推薦で大学が決まっていた。スポーツ推薦だと言っていたっけ。勉強はする予定がなさそうだけれど、何か予定があって登校したのかな。


「まぁ、ちょっと陸上部顔出して、その後は音楽室行くかな。あいつも来てるかもしれないし」


「そっか」


 音楽室か。私は少し頬を緩ませながら椿の顔を覗き込む。


「な、なんだよ…」


 椿は恥ずかしそうに顔を背ける。


「ううん!なんでも!」


 椿の恋を私も応援したい!今はあまりつっこまず、優しく見守ることにする。二人がいつもどんな感じなのか、すっごく気にはなるけれど。


 「あ、」と呟いた椿は、「美音、悪い!先行くな」と言ってそそくさと行ってしまう。


「え?椿?」


 急にどうしたと言うのだろうか。何か嫌なこと言っちゃったかな?そう少し不安に思っていると、頬に氷が触れたようなとてつもない冷たさを感じた。


「ひょぇっ!!?」


 あまりの冷たさに思わず変な声を上げてしまうと、くっと笑う声が近くから聞こえた。


< 19 / 26 >

この作品をシェア

pagetop