恋がはじまる日 (おまけ)
「書類の提出にきただけ」
そう言った藤宮くんは、私の頭を乱暴に撫でる。
「わっ」
せっかく今朝頑張って隠した寝癖が、ぴょこんと姿を現す。
「ちょ、藤宮くん!?」
「佐藤、随分嬉しそうだな」
「え!?」
そりゃそうだ。藤宮くんのことが大好きなのだから、会えたら嬉しくて仕方がない。
ここのところは、お互い進学の準備やアルバイトで忙しく、なかなか会えていなかった。
以前は照れて言えなかった気持ちも、付き合い始めて、少しづつ伝えられるようになった。
「そ、そりゃそうでしょ!藤宮くんのこと好きだし、毎日だって会いたいんだから!」
伝えられるようになったとはいえ、恥ずかしいし照れくさいことには変わらない。私は羞恥で頬に熱が籠るのを感じた。
「ふーん」と言った藤宮くんは、相変わらずからかうような薄笑いを浮かべ、私を見下ろす。
「寒いからさっさと教室行くぞ」
「あ、待ってよ藤宮くん!」
付き合う前も付き合ってからも、藤宮くんは相変わらずだけれど、彼の隣が私にとってとても落ち着くものになったような気がする。
卒業しても、ずっとこのままでいられるといいな…。