「一緒に虹を、見てみたい」
私には消したい記憶がある。消したい事故の記憶は、ずっと心の奥底に残ったまま。
でも、消したくない記憶がなくなってしまう嶋原君は、私なんかより、ずっと辛いかもしれない。
私は……ずっとネガティブで、殻に閉じこもっているばかりではいけない。
新しい環境に来て、新しい家族、友達を持って、変わりたい。
そう、少しずつ思えるようになっているのは、大きな進歩だろう。
──ピンポーン。
ハンバーグとポテトフライが焼きあがる頃、インターホンが鳴って、三人は夕暮れ一緒にやって来た。
ジャージ姿の石黒さんと塩見君は、それぞれバレーとバスケの部活帰りだと言う。
「はじめまして、希花ちゃんの母……三人とも、よく来たわね」
一瞬、“母”と言うとしたおばさんだったが、口籠る。
そのうちおじさんも二階から降りてきて、普段お座敷に置いている広い机を、今日は即席でリビングに持ってきて、大人数で手を合わせた。
当日までに事情を説明でてきなかったため、親子のように接することになってしまったが、こうなってしまいおじさんやおばさんを悲しい気持ちにさせたに違いない。
「んまーっ、おばさん、最高です」