「一緒に虹を、見てみたい」
「……ここは、雨の街なんですよね」
シトシト鉛色の空から落ちてくる雫を掌で受け、私が呟くと、おじさんもおばさんも暗い空を見上げる。
「そうだよ、ここは雨の街。ずっと雨が降り続けている、不思議な街」
「毎日雨じゃあ、希花ちゃん嫌だったかしら」
「いえ、そんな。ただ、今までA街には来たことがなかったから、新鮮で」
──ここは、A街、通称“雨の街”。
一年の大半天気が悪く、この摩訶不思議な現象は、未だ解明されていない。
雨は嫌いだ。あの日、あの時、両親を失った瞬間を、思い出してしまう。
季節は七月だが、これからもずっと梅雨明けはしないようだ。
嫌いな雨と、私はこれから毎日顔を合わせなければならないのか……。