「一緒に虹を、見てみたい」
「それから、ずっと施設で暮らしてて……七月に、養子が決まってこの街に来たの」
初めて聞く事実に、俺は返事を頭の中で迷う。
「当時の事故が、未だに夢に出てきて……それで、笑顔が引きつってしまう」
だから、上手く笑えなくて、俺にぎこちないと指摘された、と恵口は言う。
確かに恵口の笑顔に影があるのは何となく分かっていたが、以前の俺はそれを直接、恵口に言っていたのか。
「でも、変わりたい、変われたらって……ちょっとずつ、思えるようになってる」
「そっか。辛いこと言わせて、ごめん」
「ううん、大丈夫」
小さく笑う恵口の表情はまだ硬いが、何れ心のつっかえが取れて、いつか影のない笑顔で笑い合えたらいいな。
「またさ、一週間後から晴れるっぽい」
「……うん、私もさっき予報確認した」
「俺、恵口と友達になれて良かったよ。花火も楽しかったし」
「私もだよ。また、友達に……なれたらいいな」
窓外は雨が降っており、天気が悪いまま。
それでも俺達は、確かに目を見て、笑いあったのだ。