「一緒に虹を、見てみたい」






 すると、輝かく頭上の木々を見ていると、ハラハラ雪が降ってきたではないか。

「……雪」

「あ、ホントだー! ホワイトクリスマスじゃん」

 降ってくるのは雨ではなく、ふんわり軽い粉雪。

 雨、もう長い間見ていないな……。

 嶋原君は今、どんな景色を、誰と見ているのだろう。

 雨人は何も持たずに消失するため、消失した後の世界の写真はなく、雨人の証言に作られた参考イラストしか見たことがない。

 そこは廃墟のような建物で、建物の周りには、薄汚れた瓦礫の山だけが広がる。

 逃げ出したくても逃げ出せない世界の中で、嶋原君は過ごしている。

 それでもどうにか届かないものか、私はコートのポケットから携帯を取り出すと、イルミネーションの写真を撮って、その場で嶋原君宛に送信してみる。





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