「一緒に虹を、見てみたい」
放課後になると、塩見君と石黒さんはいつも通り部活に行ってしまい、私は一人家に帰ろうとしていた。
しかし、下駄箱で靴を出していると、ポン、と肩を叩かれ振り返ると、そこには嶋原君が立っていた。
「もう帰るの? 部活は?」
「してない」
「んじゃ、一緒に帰る?」
軽く言われ頷くと、私達は別々の傘を差して校門を出る。
「恵口はどの辺りに住んでるの?」
もう、嶋原君は、以前私の家に来たことを忘れている。
どんなに思い出を作っても、すぐにリセットされ、全てなかったことになってしまう。
でも、私の中の記憶は消えずに、積み重なってゆく。
「西に五分くらいの所に住んでるよ」
「俺も、西に七、八分くらい」
「知ってるよ」
「そっか。……ごめん、前に同じこと言ったんだろうね」