「一緒に虹を、見てみたい」






 久々に見た姿に、あんなに嬉しいと思っていたのに、同じくらい苦しさもあり、これは一体何だろう。

 行って欲しくない、離れたくない、という感情は……。

「何これ、プラネタリウム?」

 ぼーっと考え事をしていると、後ろから声が聞こえて、ハッとして振り向くと、嶋原君は道の真ん中で立ち止まっていた。

 すぐに後戻ると、嶋原君は道路に落ちている、一枚の濡れたチラシを見ていた。

「この街に、プラネタリウムができたの?」

「あぁ、うん、二月くらいにオープンしたばかりで」

「へぇ、そうなんだ」

 この街から出られない嶋原君は、新しい物に興味を示している。

「そっか、行ってみたいな」

 ポロッと出た嶋原君の声に、私が彼を見ていると、嶋原君は私の目を見て言ってきた。

「恵口、今から時間ある?」

「え?」






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