「一緒に虹を、見てみたい」





「私は……忘れない。嶋原君が忘れてしまっても、私は忘れないよ」

 苦しながら笑い返すと、やがてブザーが鳴って、辺りは本当の暗闇に包まれた。

 ドーム型の曲面スクリーンに星の像が映し出され、音声で説明がされる。

 本日の星空や、天文現象、季節の星が、キラキラ輝いている。

「わぁ……」

 微かに声を漏らした嶋原君にとって、それは偽物であっても、立体的な星空を見たのは初めてなのかもしれない。

 輝く星座が、切なげに見えるのは、きっと私達の間には事情があるから。

 この一時の時間が、ずっと続けばいいのに。

 嶋原君の記憶が、消えなければいいのに。

 やがてホールに明かりが戻る頃、嶋原君は珍しく興奮気味に声をかけてきた。

「俺、星空見たの、初めてだった」
  
「綺麗だったね」

「来れて良かったよ」





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