「一緒に虹を、見てみたい」
~恵口希花~
あの夏の事故を機に、私は自分の心の持ちよう、というものに、確実に変化が起きていた。
長い年月をかけて取り戻した笑顔を、おばさんやおじさんに向けられるようになっていたのだ。
「希花ちゃん、今日は塩見君とお出かけなのよね?」
「はい、D街の産業祭に行くことになってて」
「いいわね、青春してるじゃない」
ふふ、と微笑むおばさんに、私はパタパタ手を振って否定する。
「でも、塩見君は希花ちゃんのこと、好きなのよね?」
「それは……まぁ、そうは言ってくれてるんですけれど」
「希花ちゃん的には、今一歩足りない感じ?」
「足りない、だなんて……」
私はおばさんの洗った皿を貰って布巾で拭いていく。
急かされないから、甘えてしまっていたが、いつ決断を迫られるか分からない状況。
ここまできてもハッキリできないのは、やはり塩見君に対する気持ちは、恋愛感情じゃない……とか?
友人としてはとても良い関係を築けていて、壊したくない。
でも、ハッキリしなければいけないのは、分かっていて……。