「一緒に虹を、見てみたい」
“恵口さんの顔が好き”と、最初は私の見かけから興味を持たれたが、塩見君は今、私の内面も見てくれていることは、分かっている。
それくらい、毎日一緒にいるし、彼は大事な存在になっていた。
「ほら、行こう」
自然に手を握られ、私達は祭りの会場に足を踏み入れる。
ズラリと並ぶ屋台から、食欲をそそる良い匂いが立ち込めて、ぐぅっとお腹が鳴りそう。
特設ステージでは、子供達がドンドン和太鼓を叩きながら、演舞をしている。
「子供って、可愛いよなぁ」
「塩見君、子供好きなの?」
「大好き。将来は四人欲しいなって、思ってる」
そこで、サラッと“恵口さん、将来宜しく”、と言う塩見君に困惑すると、彼は笑いながら足を進める。
「お腹空いた、何か食べよっか」
「塩見君、何食べたい?」
「そうだなぁ。いくつか買って、分け合わない?」